いわゆる英語力というとき、文法の知識や、会話的表現力や、発音の正確さなどと並び、単語力(語彙力)つまりどれだけ英単語を知っているか、ということがひとつの重要な側面となると思います。
私の受験時代には、「英語力とは単語力だ」などという標語を見た記憶もあります。
単語をたくさん知っていることは、いろいろな場面で、非常な強みになります。
しかし、いざ単語力を増強しようとした場合、それを効率的・効果的に行うことは、実際にはなかなか思うようにはいかない、というのが現実ではないでしょうか。
単語集で単語だけ記憶した形になっていても、それが実践の場で使える形になっているかどうかはまた別問題です。
ここでは、学術的あるいは統計的調査ではなく、私の経験を踏まえた雑感として、単語を記憶に定着させる効果の高いパターンなどについて、思うところを述べたいと思います。
専門家的論考ではなく、あくまで雑感であることを前提とさせていただきます。
伝統的・正統的な方法は、たくさん読み、新出単語(あるいは熟語・成句)を調べ、単語帳を作って繰り返し参照する、といった方法ではないでしょうか。
このやり方は、それが正統的であるだけの効果はあると思いますが、ある種の苦痛を伴う作業でもあります。
ひとつには、単語を調べるということが、辞書において同じ文字列を探す(あるいは打ち込む)作業になっている、という点が、義務的・機械的でつまらない、ということがあると思います。この作業には、インスパイアがない、というか、記憶に訴えるところが乏しいと感じるのです。
なので、新出単語を認知し、それを調べる、という行為そのものから、そのまま単語が記憶に定着する、という効果はそれほど強くはない、と感じます。ただ1回の単語調べで記憶する場合も、ないとは言いませんが、一般にそこまでのインパクトはないと思います。
それゆえ単語集を作って復習する、などといったプロセスが重要、ということになります。
単語は主として文字列で記憶されるのか、それとも音声イメージで記憶されるのか。
文字列すなわちスペリングの視覚イメージでの記憶も確かにあり、リーディングにおいては、自分の知っている文字列かどうかを調べながら進む、という側面もあるかもしれません。
他方、音声イメージも重要で、リスニングや会話などでは、音声イメージの記憶が即座に反応しないとうまくいかないと思います。またリーディングにおいても、単語が目に入ると同時に、音声イメージが先に反応することも多いと思います。
私のお勧めは、音声イメージの力をうまく使うことです。
リスニング環境において、単語の音声イメージは、リーディングにおける新出単語の文字列とは違い、機械的に与えられるものではなく、自らの集中力で、文脈中から他の音声と区別して認知・識別して得られるものです。
つまり、単語の音声イメージは、それが獲得された時点で、半分は、自分の頭に入ってきていることになります。そして同時に、「意味を知りたい」という欲求がおそらく自動的に生じます。
したがって、もし、得られた音声イメージから、対応する単語が辞書から検出でき意味を知ることができれば、知りたいという欲求が満たされた、ということになることから、その作業自体のインパクトはかなり大きく、文字列に関する機械的・義務的な作業に比べ、記憶に訴える力が格段に強い、と思うのです。
私の経験では、1回の単語検索から、そのまま記憶に定着してしまう、というパターンも、結構あるのです(いつもうまくいく、というわけではありませんが、その確率は文字列(綴り)からの単語調べに比べ有意に大きい、という印象です)。
しかも、音声イメージから単語が記憶された場合、同時に、その単語が発せられた状況も合わせて印象に残ることもしばしばあって、これはかなり強力です。
例えば、「何々の映画で登場人物の誰がどういった状況でしゃべった言葉」とか「何のニュースでどういったトピックについて使われた言葉」といった付随情報までいわば自動的に一緒に記憶に残ったりします。
認知されたものが綴りではなく音声イメージである場合、通常は、その意味・綴り・発音は、辞書により調査・確認される必要があります。
意味は、文脈からなんとなくわかることもありますが、辞書で確認されることで、しっかりしたものになります。
綴りは、音声から確実に特定されるものは少なく、しばしば意表をつくスペリングであったりします。これは調べて覚えるほかありません。
発音についても、辞書の発音記号表示と照らし合わせて、自分の認識した音声イメージがこの単語であったことを確定し、合わせて正しい発音を確認することになります(アクセントの確認も重要です)。
文脈からの類推だけでなく、辞書からの確認をも合わせて、認識した単語の記憶への定着度が高まる、といえます。
このパターンで使用する音源(ソース)は、どんなジャンルでもよいと思います。映画・ドラマから、ニュース、スポーツ中継まで、いろいろあります。
ただ効率がよいのは、ニュース系のTV番組だと思います。
さまざまなジャンルの話題があって単語密度が高く、それらが簡潔な文で明瞭に発音され、全体的な筋や心情を追う必要もなく、わかるところだけピックアップでき、しかも意味内容がある程度映像から推測できる、という特徴があります。
ただ、音声イメージからの単語獲得の場合、大きな問題となるのは、辞書で調べることが簡単ではない、ということです。
文字列(綴り)から調べる場合、語形変化などはあっても、基本的に、そこに文字列が与えられていますから、辞書を引いて目的の単語を発見できるのは、むしろ当たり前といえます(だからこそこの機械的な作業はしばしば義務的で面倒くさく感じられます)。
音声情報から調べる場合、その音声的分別が正しいとは限らず(つまり自信がない)、しかもその綴りがわかりませんから、英和辞典で調べることは一般にかなりの労力を要することになります。
仮に正しく音声を認知できていても、英語の発音と綴りの関係は、このブログでもさまざまな記事で示しているように、非常に複雑です。音の情報だけから綴りを正しく構成することは、一般には非常に大変です。
このように、うまくいけば効果の高い、音声イメージからの単語獲得も、うまくいかせるのが結構大変で、ここで効率が大きく落ちてしまうという難点があります。
その難点に対するひとつの対処法が、手前味噌ではありますが、WordSearch English Dictionary の利用、ということになります。
このサイトのTopページでもご紹介しているように、「ワードサーチ英語検索辞典(WordSearch English Dictionary)」(WordSearchDictionary:WSDとも称します) は、耳で聞いた音声から、未知の英単語を検索発見するための辞典です。リスニング環境における英単語検索の便を図ることを企図して作られた辞書です。
詳細は、「WSDの詳細」のページに解説がありますが、WSDでは、リスニングから目的の英単語を効率的に検索するための、さまざまな工夫がなされています。
また、本サイトに掲載されている WSD-Lite は、ウェブ上で簡便に利用いただけるようにしたWSDの簡易版で、発音記号を省き、検索用カナ・英単語のスペリング・語義 のみとしたものです。
発音記号の欄がない分、携帯端末のような限られた画面上でも、一覧性は確保しやすくなっています。
反面、正しい発音の確認や、カナは同じでも発音が異なる単語の区別などは、この辞書単体ではできず、スペリングから英和辞典等を併用する形になります。
その意味で、辞書としてのパワーは、正規版のWSDに比べ制限されますが、簡易的には英単語の検索用途として結構使えます。正確な発音については、英和辞典等で別途確認されることをお勧めします。
また、WSDにおいてもWSD-Liteにおいても、一覧性を重視する観点等から、語義説明はあえて簡潔なものとなっていますので、検索によって獲得された単語については、そのスペリングを元に、英和辞典等を併用して、語法・熟語・成句等を含め、詳しく調べることによって、より単語の獲得が確かなものとなると思います。
これは、「知りたい」という欲求の継続、と考えれば、二度手間とはなりません。
以上のように、リスニング環境から、音声情報をもとに「知りたい」という欲求を利用しつつ英単語を検索獲得することは、文字列をベースにした単語力増強に比べ、印象度・記憶定着効果が大きいものと考えます。
WSDやWSD-Liteは、英単語の音声からの検索に特化した辞典としての試みです。リスニング環境における英単語獲得と、単語力・語彙力の増強においても、有効な道具となることが期待されます。