悉皆調査の6回目です。今回は、語末(語尾)の発音が / i / である単語の綴りについて調べてみました。
検索条件が短すぎて、複数の発音を持つ単語などの場合に、調べもらしがある可能性があります。その意味で、準悉皆調査、という扱いになることをご承知おきください。
弱母音 / i / は、happy の語末が典型的で、”happy vowel” などとも言われます。
/ i / が語末に現れる場合、そのほとんどで、綴りは y で終わりますが、そうでないものも一部見られ、やや特殊感がありましたので、調べてみました。
語末が / i / の単語は、WSDでは、約1900強ありました。
はじめに、そのなかで綴りが y で終わる形ですが、そのほとんどは、子音字 + y です。
母音字 + y となるものは、以下のとおりでした。
-ay : -day の形になるもの。例:Sunday /sʌ́ndeɪ, -di/
-ey : chimney, money など約30個
-iy : なし
-oy : buoy /búːi, bɔɪ|bɔɪ/ のみ
-uy : colloquy /kάləkwi|kɔ́l-/ のみ(quはひとかたまりで/kw/と考えられるので、参考例です)
語末が y でないものは、約100個ありました。
(1)語末が -i の形
-i は、WSD中に36個ありました。
・地名や固有名詞にしばしば見られます。
Mississippi, Missouri, Saudi など
・一般名詞は20個ほどあります。
khaki, spaghetti, taxi, timpani など
(2)語末が -ie の形 20個
calorie, cookie, Erie, movie など
(3)be動詞や代名詞などの語末 e
be, he, maybe, me, she, we など (一般に強調形で/-iː/もあり)
(4)語末が -ee の形 6個
coffee, committee, freebee (freebie もあり), levee, subcommittee, Yankee
(5)語末が 子音字 + e の形((3)で挙げたものを除く)
語末に e がある形は、フォニックスにおける、「サイレントの e」や「マジック e」が有名ですが、以下の単語は、「発音する e」の例にもなっています。
・-le の形 6個
Chile, facsimile, finale, hyperbole, simile, ukulele
・-me の形 3個
acme, epitome, sesame
・-ne の形 5個
abalone, aborigine, acne, anemone, Daphne
・-phe の形 2個
apostrophe, catastrophe
・-re の形 3個
cadre(/kǽdri|kάːdə/), de jure, furore(他の発音もあり)
・-te の形 4個
ante, coyote(他の発音もあり), ex parte, vigilante
・その他の形 6個
-ce : pace (/péɪsi/:「歩調」の pace とは別語)
-che : synecdoche
-de : bona fide
-ke : sake
-pe : recipe
-we : Zimbabwe (/-wi, -weɪ/)
(6)その他の形 5個
以上のいずれにも入らない形の単語です。
chamois (/ʃǽmi/ 他の発音もあり)
chassis (/tʃǽsi, ʃǽsi|ʃǽsi/)
curriculum vitae (/- váɪt̬i/ 他の発音もあり)
Guinea (/gɪ́ni/)
petit (/pét̬i/)
見落としがあるかもしれませんが、検索結果は以上のようになりました。
(注)
WSDでは、/ɪ/ と /iː/ と /i/ を区別する流儀をとっています。本記事でも、それを前提にしています。
また、/i/ は、/ɪ/ や /iː/ とは異なり、厳密には音素(phoneme)ではない、といった議論もありますが*、本ブログではそういった厳密な議論には立ち入りません。
*CAMBRIDGE English Pronouncing Dictionary 17th edition (2006):Introduction xiv