悉皆調査 5:-cy, -sy

「悉皆調査」の5回目です。

なお、改めて念のため申しますが、悉皆調査の意図は、英単語に関する、いわゆるフォニックスや造語論とは別に、ある形について、ともかく全数調査する、ということです。

フォニックスや造語論は、それはそれで重要なのですが、それら自体を正しく理解する必要があるとともに、例外がある可能性を頭においておかねばならない(規則外のものは、個別に対応する必要がある)、ということがあり、個別具体の状況下で、発音から綴りを確信を持って構成できることは保証されません。

それならはじめから全数調査をして、多いパターンや例外的なパターンを分類把握しておけば、むしろ扱いやすくなるのでは、ということです。

なお、全数、といっても「ワードサーチ英語検索辞典」(WSD)の中での全数、という制約があり、また、調べ漏らしの可能性が皆無ではないこともご承知おきいただかねばなりません。


今回は、語末(語尾)の -cy と -sy についての調査分別です。

基本語との関連で容易にわかるものも多いですが、ちょっとまごつくものもありますので、悉皆調査してみました。

(1)語末が -cy の形

-cy は、WSD中に、96個ありました。

・-cy の多くは、-acy あるいは -ncy の形になります。

-acy : diplomacy, literacy など
-ncy : agency など

・そのほかの形が11個ありました。

6個は、基本的関連語が -ce の形のものでした。
fleecy, icy, juicy, policy, saucy, spicy

残りは5個で、
bankruptcy, idiocy, mercy, prophecy, secrecy

という結果でした。

(2)語末が -sy の形

-sy は WSD中に、44個ありました。これは、/si/ と /zi/ があります。うち /si/ を含むものは、27個でした。

・-cyに多数ある a+, n+ のパターンについては、

-nsy という形は存在しませんでした。
-asy は5個ありました。-tasy の形が3個、他が2個です。
apostasy, ecstasy, fantasy
greasy, idiosyncrasy

・そのほかのものが、-syとなるわけですが、

基本語が -ss の形であるなど、-ssy の形になっているものが9個ありました。
brassy, embassy, fussy, glassy, glossy, grassy, messy, mossy, pussy

-psy の形のものが4個ありました。
autopsy, biopsy, epilepsy, Gypsy

残り9個は、
controversy, courtesy, curtsy, gutsy, heresy, hypocrisy, jealousy, leprosy, pleurisy

となります。

 

悉皆調査 4:1つ、あるいはごく少数しかないもの (1)

「悉皆調査」の4回目です。

綴りと発音の関係について、WSD上で、1つ、あるいはまれにしかない組み合わせについて、いくつか調べた結果です。

なお、検索すべき綴りや発音の部分がごく短いものについては、検索条件の設定や目視による確認が難しく、見落としのある可能性もあることをご了承ください。


(1)ear の綴りで /ɑːr/ の発音 : WSD的関心からは、「 /ɑːr/ の発音で、ear の綴りをもつもの」ともいえます。以下同様。

heart が有名ですが、heart を含む単語の他は、hearth(炉辺)のみでした。

(2)er の綴りで /ɑːr/ の発音

sergeant(軍曹)のみでした。

(3)ie の綴りで /e/ の発音

典型は friend ですが、friend を含む語の他は、pimiento(赤ピーマン)のみ(発音 /je/ もあり)でした。

(4)ew の綴りで /oʊ/ の発音

この形は、sew(縫う)及びその派生語(sewer, sewing, sewn)のみでした。

(5)wor の綴りで /ɔːr/ の発音(/wɔːr/ ではなくて)

この形は、sword と swordfish(メカジキ)のみでした。

(6)ce- の綴りで /tʃe-/ の発音

cello  /tʃéloʊ/ と、concerto  /kəntʃéəroʊ/ のみでした。

なお、/tʃe/ では、Czech  /tʃek/ という例もあります。

(7)oir の綴りで、/waɪər/ の発音

choir  /kwáɪər/(聖歌隊)のみでした。

なお、一般には、oir, oire の形は、memoir, repertoire のように、/wɑːr/ の発音になります。

また、/waɪər/ の発音を持つ形は、一般には、wire, -quire /kwaɪər/ の綴りになります。

(8)ay- の綴りで /e-/ の発音

say の三単現の says  /sez/  は、例外的な発音の形ですが、ay(一般な発音は /eɪ/ )が /e/ に発音される形は、他には prayer(「祈り」:「祈る人」ではない)/preər/ のみでした。
(注)確認に困難があったので、「準悉皆」としてください。

(9)cht の綴りで /t/ の発音

yacht の1つだけでした。

(10)ar の綴り(areではなく)で /eər/ の発音 (準悉皆)

scarce, scarcely, scarcity のみでした。

WordSearch(ワードサーチ)Dictionary というネーミングについて

wordsearch という語は、一般には、アルファベットの方陣のようなものから、縦・横・斜めに英単語を見つけていくパズルをさす言葉で、日本語のカナなど、他の言語版もあるようです。

ワードサーチ英語検索辞典(WordSearch English Dictionary)には、WordSearch というネーミングが付されていますが、これは、上記パズルを念頭におくものではありません。

本辞典の、耳で聞き取った音声列の中から、英単語を検索発見していくための辞書、という目的・機能を、もっとも的確に表現する言葉を考えたところ、word を search するための辞典にほかならない、ということで、WordSearch English Dictionary(あるいは WordSearch Dictionary:WSD)という名称にしたものです。

WSDは、「カナ引きの英和辞典」ではなく、「英単語を検索発見するための辞典」である、という主張です。

悉皆調査 3:ccess, cess, ssess, sess

今回は、ccess, cess, ssess, sess の形について、調査分別してみました。

accessory とか necessary とか、c や s が重なる単語は、重なるかどうかを含めて、印象としてかなりややこしいところがあります。

悉皆調査の結果は、以下のとおりです。

・ccess

この形は、12個ありましたが、ざっくり分けると、access 系と、success 系の2種でした。

access, accessible, accession, accessory, inaccessible, success, successful, successfully, succession, successive, successor, unsuccessful

ccの綴りには、必ず /k/ の音が混じります。逆に、cess, ssess, sess の部分は /k/ の音を含みません。

・ssess

これは、11個ありました。これらも、assess 系と、possess 系の2種にまとめられます。

assess, assessment, dispossess, possess, possessed, possession, possessive, possessor, prepossess, repossess, repossession

・sess

4個ありました。obsess, obsession, obsessive, session
実質的には obsess 系のみといえます。

・cess

これが一番多く22個ありました。

cessation, cession, concession, excess, excessive, incessant, incessantly, intercession, necessarily, necessary, necessitate, necessity, predecessor, princess, process, procession, processor, recess, recession, recessive, secession, unnecessary

悉皆調査 1,2:-ieve と -eive,ieと /ɪ/

綴りと発音の関係については、フォニックスによる規則性があり、しかし、例外もある、というのが英語の基本線だとしても、規則はともかく実際はどうか(何が例外か)という問題があります。また、あるいは、同じ発音を持つ、似たような綴りの間の紛らわしさ、という問題もあります。

ここでは、フォニックス的観点とはやや異なり、「悉皆調査」と称して、WSD のデータベースを全数調査して、パターンの分類をしたものをご紹介してみたいと思います。
とはいえ、大それたものではなく、Excel 上で、検索条件を設定してヒットした単語を拾い上げて分類したもの、ということです。

なお、お断りとして、検索条件の設定により、必ずしも正確な調査になっていないかもしれません。あくまで参考としてご覧ください。
また、全数調査といっても、WSD の収録語数は、英単語ベースで18000余りであり、WSDの収録範囲を超えるレベルの単語にまでは及んでいません。

また煩雑さを避けるため、明らかな派生語は、省くことがあります。


今回は、やや素朴な(初歩的な)ものとして、/íːv/ の発音を持つ、(主として語末(語尾)の)ieve と eive を調べてみました。

-ieve の形を持つもの:

(語末)achieve, believe, grieve, relieve, reprieve, retrieve(, sieve)
(派生形)achievement, aggrieved, believer, retriever

-eive の形を持つもの:

(語末)conceive, deceive, misconceive, perceive, receive
(派生形)received, receiver, receivership

※ sieveは発音が /sɪv/ であり /íːv/ と異なります。

ここからわかることは、(調べ漏らしがなければ) -eive の形は、すべて -ceive の形であり、逆に -ieve であれば、前に c は来ない、ということです。

また、上記の -ceive 系の単語は、すべて、-ception の形の派生語を持っている一方、-ieve 系からこの形の派生は想起しがたい、ということがあります。

つまり、 ceive 系( -ception の派生語を持つ)と、それ以外の ieve 系に、かなり明確に分かれる、といえます。


なお、-ieve 系では、sieve /sɪv/ (ふるい)という例外的発音があります。ieの綴りで /ɪ/ の発音、と考えると、これはかなり数が少ないです。悉皆調査すると、

handkerchief(/-tʃìːf/ もあり), Liechtenstein, mischief, mischievous, sieve の5語だけでした。
(弱音節と固有名詞を除くと sieve のみ)

ただ検索条件の設定が難しいので、見落としがあるかもしれません。

なお、/i/ の発音は、また別で、WSD では、anomie, calorie, caries, married, movie, prairie, varied など、他にも結構あります。