短母音 / ɪ / :母音と綴り字(4)

英語の母音と綴り字(スペリング)の対応について、今回は、短母音 / ɪ / について、WSDから調べたものです。

母音 / ɪ / も、短母音の中では、綴り字の特殊例がかなり多いです。

(ここでは、アクセントのある例のみを扱います。弱母音としての / ɪ / については、別に記事にする予定です。)

 

以下、/ ɪ / の音を作る綴り字と、その単語の例を示します。

 

i : bit, fish, lift など多数

y : crystal, myth, system など

以下はやや特殊な例となります。

e : English, pretty アクセントのあるものは例が少ないです。

(弱母音としての / ɪ / であれば、e の綴り字は、begin, predict, united など多数あります。)

ee : been(/bɪn|biːn, bɪn/), breeches(/brɪ́tʃɪz, bríːtʃɪz/), Greenwich(/grénɪtʃ, grɪ́n-, -ɪdʒ/)

ie : Liechtenstein, sieve (悉皆調査:2で既述)

o : women

u : business, busy

ui : build, guilty

また、第二アクセントの例として、下のものがありました。

ei : counterfeit

 

また、/ ɪ / については、/ɪər/ の形(/ɪər/ の /ə/ はイタリック体です。米音英音に書き分けると /ɪr-|ɪər-/ の形:後述の予定)の米音 /ɪr-/ にも注意が必要です。

er : cereal
ear : hearing
eer : cheery
ere : hereabouts
eo : theory
ir : delirious

などがあります。

 


(注)綴り字・単語の列挙について、一般に

綴りと発音については、WSD書籍版のデータに依拠しています。

例が1個あるいは2個しか挙がっていない場合でも、その1語あるいは2語のみ、という強い主張をするものではありません(悉皆調査ではありません)。

その他、詳しい注記については 短母音 / e / :母音と綴り字(1) の記事と注をご参照ください。

また、英語の母音と綴り字(27) 一覧表 で、記事にした母音全体について概観(一覧表)があります。

 

短母音 / æ / :母音と綴り字(3)

今回は、英語の短母音 / æ / と、その綴り字のバリエーションについて、WSDから調べたものです。

母音 / æ / については、綴り字のバリエーションは短母音の中ではもっとも少ない部類だと思いますが、それでも何通りかの特殊例があります。

 

/ æ / の音を作る綴り字と、その単語の例を示します。

 

a : act, cat, happy など多数

むしろほとんどの場合、/ æ / の綴りは a になるといってよいようです。

以下はやや特殊な例となります。

au : aunt(/ænt, ɑːnt|ɑːnt/), draught(/dræft|drɑːft/), laugh(/læf|lɑːf/)

ai : plaid, plait(/pleɪt, plæt|plæt/)

さらに特殊なものとして

i : lingerie (英音が/lǽndʒəri/)

また、gu- の形ですが

ua : guaranty

があります。

 


(注)綴り字・単語の列挙について、一般に

綴りと発音については、WSD書籍版のデータに依拠しています。

例が1個あるいは2個しか挙がっていない場合でも、その1語あるいは2語のみ、という強い主張をするものではありません(悉皆調査ではありません)。

その他、詳しい注記については 短母音 / e / :母音と綴り字(1) の記事と注をご参照ください。

また、英語の母音と綴り字(27) 一覧表 で、記事にした母音全体について概観(一覧表)があります。

 

短母音 / ʌ / :母音と綴り字(2)

今回は、英語の短母音 / ʌ / と、その綴り字のバリエーションについて調べたものです。
悉皆調査ではありませんし、またWSDにはない単語にまでは及んでいませんので参考としてご覧ください。

短母音 / ʌ / については、綴り字のバリエーションは前回の / e / ほど多くはありませんが、それでもいくつかのパターンがあります。

 

/ ʌ / の音を作る綴り字と、その単語の例を示します。

 

u : cut, justice, trust など多数

o : come, front, month など多数

ou : couple, rough, touch など

以下はやや特殊な例となります。

oo : blood, flood

oe : does (弱音は/dəz/), doesn’t

a : Qatar(/kʌ́tɑː/他の発音もあり), was(/弱音wəz; 強音wʌz, wɑz|wɔz/), what(/hwʌt, hwɑt|wɔt/)

 

また、/ ʌ / については、綴りに r を伴って、/əːr-|ʌr-/ の形をとるものがいくつかあります。

ur : currency, hurry
or : borough, worry
our : courage, nourish

などがあります。

 


(注)綴り字・単語の列挙について、一般に

綴りと発音については、WSD書籍版のデータに依拠しています。

例が1個あるいは2個しか挙がっていない場合でも、その1語あるいは2語のみ、という強い主張をするものではありません(悉皆調査ではありません)。

その他、詳しい注記については 短母音 / e / :母音と綴り字(1) の記事と注をご参照ください。

また、英語の母音と綴り字(27) 一覧表 で、記事にした母音全体について概観(一覧表)があります。

 

短母音 / e / :母音と綴り字(1)

英語の短母音 / e / と、その綴り字(スペリング)のバリエーションについて、WSDのなかから調べてみました。

候補となる英単語の数が膨大になるため、悉皆調査とはなりません。辞書類等に例として挙がっている綴り方を検索収集したもののほか、目視によりたまたま気づいたもの、などが集められています。
したがって、綴り字の組み合わせはこれがすべて、などという趣旨のものではなく、綴り方のバリエーションの例として、さしあたり私が気づいた範囲で列挙したものです。

なお、このタイプの記事は、いろいろな母音について、今後も続けていく予定ですが、すべて、同趣旨のものとなります。
また、すべての母音について網羅するものではなく、私が興味深いと考えるもののみ記事にする方針です。たとえば、/ ə / については調べていません。

(追記)英語の母音と綴り字(27) 一覧表 で、記事にした母音全体について概観(一覧表)があります。


短母音のうち、私の調べた中で、最もバリエーションが多かったのが、 / e / でした。

以下、/ e / の音を作る綴り字と、その単語の例を示します。

 

e : bench, fresh, pen など多数

ea : bread, measure, wealth など多数

以下はやや特殊な例となります。

a : many, Thames, any(弱音は/əni/)

ai : said, again(/əgéɪn/もあり), against(/əgéɪnst/もあり)

ay : says (「悉皆調査:4」で既述)

ei : heifer, leisure(米音/líːʒər/もあり)

eo : jeopardy, leopard

ie : friend, pimiento(/pɪmjénoʊ/もあり) (「悉皆調査:4」で既述)

u : bury, burial

 

なお、他にかなり特殊な例として、英音で ieu が /ef/ となっている

ieu : lieutenant (/luːténənt|lefténənt/)

があります(ただしこれはアクセントのない例となります)。

またアクセントのない例では、

ae : aesthetic (/esθéɪk|iːs-/)

もあります。

 

なお、guess や request の ue については、むしろ gu+e, qu+e という形なので、独立のバリエーションにはならないものとしました。

(追記)

ue : guess, guest

guess については、LPD*では、guで/g/の二重音字(digraph)として例に挙がっています(p330)が、CAMBRIDGE**では、ueで/e/の二重音字として説明されています(p524)。後者の立場からは、ue もバリエーションのひとつとなりますので、参考までに掲げることとしました。
(以下、原則として gue-, gui- などの形は、ue, ui の例として掲載する方針です。)

 

* LONGMAN Pronunciation Dictionary  3rd edition (2008)

** CAMBRIDGE English Pronouncing Dictionary 17th edition (2006)

 

また、/ e / については、/eər/ の形(/eər/ の /ə/ はイタリック体です。米音英音に書き分けると /er-|eər-/ の形:後述の予定)の米音 /er-/ にも注意が必要です。

ar : area
air : fairy
ear : bearing
aer : aerial
eir : heiress
ere : whereabouts
er : wherever (アクセントのない例)

などがあります。

 


(注)綴り字・単語の列挙について、一般に

学術的に厳密なものではありません。網羅的でもありません。
また記述が一貫しているとは限りません。

綴りと発音については、WSD書籍版のデータに依拠しています。

原則として主題となる母音に第一アクセントのある例を挙げています。

読まない子音字が入っている場合があっても、独立の綴り方のバリエーションにはしていません。

例が1個あるいは2個しか挙がっていない場合でも、その1語あるいは2語のみ、という強い主張をするものではありません(実際にそれだけであるケースもあるかもしれませんが悉皆調査ではありませんので確認していません)。

WSDでは、/ɪ/ と /iː/ と /i/ を、また /ʊ/ と /uː/ と /u/ を区別する流儀をとっています。本シリーズの記事でも、それを前提にしています。

表示環境によりレイアウトの崩れなどがあるかもしれませんが、仕様としてご了承ください。

(参考文献・資料)

主なものとしては、すでにご紹介した

LONGMAN Pronunciation Dictionary 3rd edition (2008)

CAMBRIDGE English Pronouncing Dictionary 17th edition (2006)

竹林滋・桜井雅人著 英語の演習[1] 音韻・形態 大修館書店 1985年

のほか、

竹林滋・斎藤弘子執筆 つづり字と発音解説(ライトハウス英和辞典 第5版 別冊付録)研究社 2007年

があげられます。

 

悉皆調査 6:語末の / i /

悉皆調査の6回目です。今回は、語末(語尾)の発音が / i / である単語の綴りについて調べてみました。

検索条件が短すぎて、複数の発音を持つ単語などの場合に、調べもらしがある可能性があります。その意味で、準悉皆調査、という扱いになることをご承知おきください。

 

弱母音 / i / は、happy の語末が典型的で、”happy vowel” などとも言われます。
/ i / が語末に現れる場合、そのほとんどで、綴りは y で終わりますが、そうでないものも一部見られ、やや特殊感がありましたので、調べてみました。

語末が / i / の単語は、WSDでは、約1900強ありました。


はじめに、そのなかで綴りが y で終わる形ですが、そのほとんどは、子音字 + y です。

母音字 + y となるものは、以下のとおりでした。
-ay : -day の形になるもの。例:Sunday  /sʌ́ndeɪ, -di/
-ey : chimney, money など約30個
-iy : なし
-oy : buoy  /búːi, bɔɪ|bɔɪ/ のみ
-uy : colloquy  /kάləkwi|kɔ́l-/ のみ(quはひとかたまりで/kw/と考えられるので、参考例です)


語末が y でないものは、約100個ありました。

(1)語末が -i の形

-i は、WSD中に36個ありました。

・地名や固有名詞にしばしば見られます。

Mississippi, Missouri, Saudi など

・一般名詞は20個ほどあります。

khaki, spaghetti, taxi, timpani など

(2)語末が -ie の形 20個

calorie, cookie, Erie, movie など

(3)be動詞や代名詞などの語末 e

be, he, maybe, me, she, we など (一般に強調形で/-iː/もあり)

(4)語末が -ee の形 6個

coffee, committee, freebee (freebie もあり), levee, subcommittee, Yankee

(5)語末が 子音字 + e の形((3)で挙げたものを除く)

語末に e がある形は、フォニックスにおける、「サイレントの e」や「マジック e」が有名ですが、以下の単語は、「発音する e」の例にもなっています。

・-le の形 6個

Chile, facsimile, finale, hyperbole, simile, ukulele

・-me の形 3個

acme, epitome, sesame

・-ne の形 5個

abalone, aborigine, acne, anemone, Daphne

・-phe の形 2個

apostrophe, catastrophe

・-re の形 3個

cadre(/kǽdri|kάːdə/), de jure, furore(他の発音もあり)

・-te の形 4個

ante, coyote(他の発音もあり), ex parte, vigilante

・その他の形 6個

-ce : pace (/péɪsi/:「歩調」の pace とは別語)
-che : synecdoche
-de : bona fide
-ke : sake
-pe : recipe
-we : Zimbabwe (/-wi, -weɪ/)

(6)その他の形 5個

以上のいずれにも入らない形の単語です。

chamois (/ʃǽmi/ 他の発音もあり)
chassis (/tʃǽsi, ʃǽsi|ʃǽsi/)
curriculum vitae (/- váɪi/ 他の発音もあり)
Guinea (/gɪ́ni/)
petit (/péi/)

見落としがあるかもしれませんが、検索結果は以上のようになりました。


(注)

WSDでは、/ɪ/ と /iː/ と /i/ を区別する流儀をとっています。本記事でも、それを前提にしています。

また、/i/ は、/ɪ/ や /iː/ とは異なり、厳密には音素(phoneme)ではない、といった議論もありますが*、本ブログではそういった厳密な議論には立ち入りません。

*CAMBRIDGE English Pronouncing Dictionary  17th edition (2006):Introduction xiv